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AXE ZANMAI
"午後 やられた!"
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今朝はいろんなことがはかどった。あとは明日から始まるカルナヴァルを待てばい
い.......そんな、うっとりした気分の昼食だった。午後には、ビーチでひと泳ぎしよう
か。それにしても、チンバラーダ事務所のおねえさんは綺麗だったなあ.....
まったく間抜けな話である。満腹のお腹をさすりつつ、レジに行って番号札を見せ
る。この店のあるじが、僕が大きな鞄を持っているものだからカウンターの後ろに預
かってくれて、引き換えに渡してくれた28番の札だ。レジの男は怪訝そうな顔をし
て、それは何だと言う。
「そこに僕の鞄があるんだ。」
「どこだ?そんなもの、ないぞ。」
「おい、冗談だろ。ねえ、ちょっと................お願いだから、さあ。」
しかし、けっして冗談なんかではなかった。店内を見回したが、僕に番号札を渡した
オヤジの姿が、どこにも、ないのだ。あのオヤジは、この店のあるじどころか店員で
さえなくて・・・とっくにこの場を抜け出して、今ごろどこかでほくそ笑みながら今
日の収穫高を勘定していることだろう。
要するに、やつは泥棒だったのだ。せっかくチンバラーダのトリオに参加できる衣
装を手に入れたというのに、袖も通さないうちにあのオヤジに騙し取られてしまった
のだ。
僕はどうしようもないほど落ち込んだ。必死の思いで休暇をとって、わざわざ40時
間もかけてやってきたというのに、憧れのバントの晴れ姿を遠巻きに眺めることしか
できないっていうのか?!
これまで何度となく一人で外国を旅行してきたけれど、盗難に遭ったのはこれが
初めてのことだ。旅慣れてくるに従って危険を察知する能力が高まり、近づいてくる
人間が怪しい奴かどうか見極められる・・・ようになったつもりだった。その自信が、
もろくも崩れた。金銭的被害よりも、こっちのほうがダメージが大きかったかもしれ
ない。
ともかく、盗まれたんだ。そして、きっと、あの鞄を取りかえすことは二度と出来
ないだろう。悔しいが、それが目の前の現実だ。しかし、だからといって泣き寝入り
はしたくない。
「泥棒だ。警察を呼んでくれ。」
そう頼んだのだが、店員たちは困った顔をするばかりで相手にしてくれない。
しかたなく、ホテルに帰ってホベルトさんに中国語で事情を説明したら、警察まで
連れて行ってくれるという。ありがたい。僕のポルトガル語では事情を説明できない
し、ここの警察官が英語を話すとも思えないのだが、ホベルトさんがいれば百人力だ。
感謝して、彼の車に乗り込む。
「気の毒だけど、警察に行ってもあなたの鞄は返ってこないよ。ここはブラジルなん
だ。」
「日本だって同じですよ。もう、あの鞄はあきらめました。でも、あの犯人は、また
同じことをするだろうから、報告だけはしておかなくちゃ。黙ったままでいたら、
後から来る旅行者たちが次々と同じ目に遭う。」
言いながら警察に報告しても無駄なんじゃないかと気弱になってきた。だが、話し
相手がいると言うのは心強いことだ。ホベルトさんに犯人の手口や鞄の中身について
話し、慰めてもらっているうちに、取り乱していた心が少しずつ平静さを取り戻して
きた。
「そうだ。大事なことがある。盗難の証明書をもらわないと、保険が効かないんだ。」
こんな大切なことに今ごろ気がついた。いつも海外旅行保険に入っているが、文字ど
おり「掛け捨て」だった。今回はそれが役に立つだろう。
予想通り、警察ではずいぶんと待たされた。しかし、接客態度はわるくなく、ニコ
ニコしながら話を聞いてくれ、書類もその場で作成してくれることになった。ホベルト
さんのおかげで滞りなく処置できたが、書類作りに時間がかかりそうだったので、
帳場を放っておけない彼は話が通じた時点で先に帰るという。それで、パトカーが僕を
送り届けてくれることになった。
パトカーの後部座席には、財布をすられたという若いブラジル人のカップルが同乗
した。カルナヴァル前のせいか、道がえらく込んでいて、パトカーはひっきりなしに
サイレンを鳴らし、車と車の隙間に割り込む。が、二人の警官のうちどちらかの顔見
知りと出会うと、平気で車を停めて話し込む。僕の隣では、美男美女のカップルが互
いを抱擁し、濃厚なキスを交わしている。(やれやれ。さすがはブラジルだ)
このカップルをホテルに届けた後で、パトカーはバーハに向かった。例のキロに立
ち寄り、注意を与えてくれるというのだ。そこまで期待していなかったのだが、異論
のあろうはずはない。警察がくれば、店の人も今後怪しい人物に目を光らせるだろう。
キロのすぐ前にパトカーを停めると、二人の警官は拳銃を手にして「バモ!」と気
合いを入れた。さすがにこの時は、真剣な目つきだった。彼らの後について店に入る。
当然、店員たちはギョッとした顔で警官を迎える。ちょっと可哀相な気もするが、し
かたがない。
ここで事実関係の確認をひととおりしたわけだが、警官は「この中に犯人はいない
のか。本当に間違いないんだな」と何度も僕に念を押した。警官は高圧的で、僕が一
人を指さしたら有無を言わせずそいつを引っ張って行きかねない雰囲気だった。警官
たちが引き上げた後で「君たちを疑ってなんかいない。保険のために必要な手続きだっ
たんだ」と弁解して、店員たちと握手して別れた。後味が悪かった。
ホテルに帰ったのは、もう日が暮れた頃だった。何という一日だ。午前中の高揚し
た気分はすっかり失せて、徒労だけが残っている。こんな気分では、明日からのカル
ナヴァルに溶け込めそうにない。今はただ、ふて寝を決め込むだけだ。
シャワーを浴びたが、服を着る気力もなくてそのままバスタオルにくるまって横に
なる。悔しさが、あとからあとから湧き出てくる。そんな自分が情けなくて、さらに
落ち込む。夢にまで見たカルナヴァルを目前にして、なんという体たらくだ。しかし、
今朝から動揺しっぱなしの僕の神経はささくれだっていて、立ち直れそうにない。
自己嫌悪の泥沼で格闘しているとき、ドアをノックする音が聞こえた。Oさんが心
配して様子を見に来てくれたのだ。ホベルトさんに警察に連れて行ってもらう直前に
電話をして、盗難に遭ったことを報告したのだが、その時の僕の心境は、「とにかく、
だれか僕の話を聞いて、なぐさめてほしい」という切羽詰まったものだった。電話の
僕の声はかなり情けないものだったに違いない。今、思い返すとひどく恥ずかしい。
Oさんは、そんな僕を元気づけようと、カルナヴァル前夜祭のパーティーに誘いに
きてくれたのだ。
日本の雑誌の特派員を兼ねるOさんとその助手としてプレスカードを登録した彼の
ナモラーダのサンドラさんは正式に招待されているわけだが、僕みたいなのがノコノコ
ついていって構わないんだろうか?
Oさんの話では「こっちのパーティーというのは、いちいち入場者をチェックしない
から大丈夫だと思う。万一ダメだったらそのときは無駄足になるけど、許してほしい」
ということだった。
このありがたい申し出は、僕にとってとてもいい気分転換になりそうだった。場所は、
メイン会場の一つであるカンポ・グランジ広場のそばのホテルだ。
広場の周りではカマロッチ(観覧席)の設営が進んでおり、カルナヴァル前夜のわくわく
するような空気が満ちている。明日までに、このテンションの高さに追いつかなくては、
と自分を励ます。
Oさんが言っていた通り、会場に入るまで誰にもチェックされなかった。名札をつけ
たり記帳したりというのも一切なし。その辺の軽食をつまんだり飲み物をもらったりし
ながら、カルナヴァルの女王(といっても、格別ゴージャスには見えなかった)が市長から
カギを受け取る儀式を間近に眺めたりした。なんというか、恐ろしく不用心だ。
会場には、謎の男・エジウソンも来ていた。二年前にペロで「コンニチワ」と声を
かけてきた怪しげなバイアーノだ。以前、日本の女の子と付き合っていたとかで、その
彼女からもらったという50円硬貨に紐を通してネックレスにしている。そのときは、
何とかというイベントで踊るから観に来てくれ、と言っていた。いろいろなブロッコに
参加しているようだが、踊りはそんなにうまくなかった。
彼は僕を見つけると「オロドゥンのリードダンサーとして参加しないか。タダで参
加できるし、衣装ももらえる」などと誘ってくれた。きっと本当の話なのだろうが、
あまりに畏れ多いので辞退した。
まだ余り日焼けしていない僕は会場で目立ったらしく、テレビ局のリポーターに英
語で話しかけられ、日本から来たと答えたために質問攻めに遭ってしまった。ライト
を当てられカメラに晒され、下手な英語で身分を偽って参加していることの辻褄を合
わせるのに冷や汗をかきつつ答えたために、終始相手のペースで押しまくられて、最
後に、画面に向かって「**テレビ、バンザイ」などと叫ぶ羽目になった。あるいは、
はるばる日本からも取材に来てるっていうことを、ビジュアル的に見せたかっただけ
で、放送されたのはそのワンフレーズだけだったのかもしれない。でも、下手な英語
でつっかえながらも、バイーアに対する熱い思いを語り、この地でカルナヴァルを迎
えることが出来た喜びを語っているうちに、こちらのテンションが上がってきたのは
ありがたかった。
帰り道、場所取りの為に路上で寝ている多くの露天商やその家族たちのあいまを縫っ
て歩きながら、「いよいよ始まるのだ」と胸が震えた。ねっとりとした夜が、不穏な
空気を孕んでざわめいている。街の人口は、きっと3倍位に膨れ上がっているはずだ。
2000年3月1日 tarde e noite
posted by axe junky at
10:48 PM
on Mar 1, 2000
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