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AXE ZANMAI
"午前 アバダーをゲット"
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ゆうべネギーニョを待っている間、マスコミ関係の仕事をしているという日本人に
声をかけられ、しばらく話した。この男はしきりに
「トリオについて行くなら、ロープの中にいないと危険だ。スリやかっぱらいが
ウジャウジャいる。殴り合いの喧嘩もしょっちゅうだ。ロープの外にいたんじゃ、
身の安全は守れない」
などと人を不安にさせるようなことを言っていた。
そろそろ、カルナヴァル期間中の身の処し方を真剣に考えなければならない。イレ・
アイエやマレー・ヂ・バレーの行進を見ようとすれば、バーハのチンバラーダやダニ
エラ・メルクリを最後まで追い掛けることができないし、逆もまたしかりだ。
予定表は手に入れたものの、時間などあてにならないし、期間中は渋滞でバスが動か
なくなる恐れもある。
結局、バイーアの神髄であるブロッコ・アフロへの参加を諦めるのは断腸の思いだが、
せっかくバーハに宿をとったことだし、今回はバーハでチンバラーダを中心に追い掛け
ることに専念しよう、と意志を固めた。
思えば、僕にとってそもそもの始まりは、偶然耳にしたチンバラーダの1stアルバ
ムだった。ミナミにあるワールドミュージック専門のCDショップで耳にした一曲---
"Toque de Timbaleiro"。
まずはそのリズムに全感覚器がザワザワとざわめいた。つぎに、大胆なデザインの
表ジャケット(かの有名なパトリシアのバストショット)にドギモを抜かれた。さらに、
裏面を見て、異様ないでたちの奏者たちに魂を奪われた。美しい褐色の肌に幾何学模様
の白いペインティング。前衛的で、しかも原初的だ。ミュージシャンというよりも、
新しい種族が深い森から現れいでた、という印象だった。
Timbaladaというtribe。
買って帰って何回も繰り返して聴くうちに、一つの明確な啓示が脊髄を貫いて降り
てくるのを感じた。この向こうに、きっと何かある。そんな運命的な予感だった。
彼らがブラジルで大ヒットを飛ばした95年は、偶然にも日本=ブラジル修好百周年
にあたり、その記念事業としていくつかのバンドが日本を訪れた。
シモーネ・モレーノ、
バンダ・メル、
そしてチンバラーダ!
すべてバイーア発・アフロ・ブラジリアン音楽だ。もちろん僕はどれも見逃さなかった。
そして、生の音に触れたことで、熱狂的なブラジル音楽ファンになった。
この頃にはもう、彼らの音楽が「アシェー・ポップ」と呼ばれることもバイーア音楽
の一つであることも知っていた。
ただ、この年のチンバラーダは本国であまりに売れてしまったために、ボーカルの
三人のスケジュールがつかず、当時まだ17才だったデニーと背中に「おおきに」と
ペインティングしていた茶目っ気たっぷりのニーニャ、そしてスリムな女性二人が
歌っていた。
96年、パトリシア、シェシェウ、アレシャンドラ等メイン・ヴォーカルを揃えて
再来日したときには、「かわちながの音楽祭」名物のワークショップを開いてくれた
おかげで彼らの飾らない素顔にふれることができた。
僕より早くアシェーの魅力にとりつかれていた三宅君は、この時既にバイーアを
訪問していたので、ペロやバーハの写真を持ってきていた。それを見たパトリシアが
「Oh...Saudade」
とつぶやいて、愛おしそうにその写真を見つめていたのが印象的だった。
トロンボーンのアウグストは「今度は、僕のうちにおもいでよ」と電話番号を教えて
くれた。この年の暮れにバイーアを再訪した三宅君は、実際に彼の家を訪ねていって
歓待され、CD「Mineral」のジャケットにサインをもらって帰って来た。
こんなふうにして、バイーアは「いつか必ず訪れなくてはならない聖地」として
心に刻まれたのだった。
97年の年末にミヤケ君に連れられてようやく聖地巡礼を果たしたのだが、この時は
あいにく彼らがポルト・セグロにツアーに出ていたために、再会を果たすことができ
なかった。二度めの巡礼(98年末)にようやく再会を果たしたのだが、 この時、シェ
シェウとアレシャンドラはもう居なかった。パトリシアとアウグストもその後脱退し、
河内長野で出会った時のメンバーとはずいぶん様変わりしている。
バイーアのバンドは人の入れ代わりが結構激しいのだ。
最近のチンバラーダのアルバムを聴くと、以前とは音楽の傾向がだいぶ変わって
きていて、むかしのチンバラーダとは違うバンドになってしまったように思えること
もある。
しかし、チンバラーダの仕掛人・風雲児ブラウンは今年もチンバラーダを率いて登場
するはずだ。彼を見ずして帰る訳には行かないだろう。
そんなわけで、今回は陣容を一新したチンバラーダを軸にカルナヴァルを過ごすこと
に決めたのだった。そのための準備に取りかからなければならない。
まず、キオスクで買った雑誌でチンバラーダの事務所の住所を探し、参加料を調べる。
値段は370ヘアウ。日本円に換算すれば二万三千円ぐらいだ。ずいぶん高い。
CD一枚20ヘアウのこの国では、ものすごく高いと言っていいだろう。たぶん、今回の
滞在で一番大きな買い物になるだろう。ただし、これは衣装の値段も込みの値段であり、
この衣装は他では手に入らない貴重なものとなる。それに、ここまで来るのにかかった
費用(飛行機代だけでも20万円)を考えれば、高いからといって断念する訳にはいかない。
ただ、今頃まで売れ残っているかどうか、それが問題だ。
両替屋に行って多めにヘアウを用意し、財布に400ヘアウほど入れてあとは隠しポ
ケットに収める。通りがかったタクシーを停めて雑誌の住所を示すと、すぐに連れて
行ってくれた。ショッピング・バーハの裏手の高台にある住宅街の一角だ。結構近かっ
た。事務所のそばに数人の男がたむろしている。そのうちの一人が、事務所に入ろう
とする僕に
「もう、売り切れだぞ」
と、声をかける。やはり、無駄足だったか。軽く落胆する。
この男がダフ屋だったら僕を足留めさせようとするだろう。しかし、彼は「気の毒
にね」という表情を浮かべただけで、それ以上の用事はなさそうだった。
せっかく来たのだから、中に入って様子だけでも見てみよう。
オフィスには、ゲットー・スクウェアから持ってきたチンバラーダ仕様のマネキン
人形やでっかいパネルが飾られていて、壁や柱までがチンバラーダ模様に塗られてい
る。これだけでも、観に来た甲斐があるというものだ。カメラを置いてきたのが残念だ。
拙いポルトガル語で「チンバラーダのトリオに参加したいのだが」と告げると、受
付の女性は首を振って「アカボウ(もう、なくなったよ)」と答える。
やはりそうか。はかない夢だったか。
もう一度オフィス全体を見回して、チンバラーダが一杯にあふれている事務所を名残
惜しげに眺めていると、大柄の白人男性が英語で話しかけてきた。
「チンバラーダのトリオに参加したいのか。」
「ああ、そうだ。でも、売り切れだって。」
「いくら払える?」
一瞬、耳を疑った。この男、ダフ屋なのか。しかし、堂々と事務所の中で交渉するか?
「実は、キャンセルしに来たんだ。あなたが買ってくれれば、こっちも助かる。」
どうやら、彼は彼でキャンセル交渉が難航していたようだ。振り込み手形のようなもの
と引き換えに現金の払い戻しを求めていたが、拒否されたために僕に声をかけた、という
ことらしい。それなら、信用してもよさそうだ。
ただ、このような形での譲渡が認められるものなのかどうか、不安ではある。
というより、トリオに参加するための手続きに何が必要なのかを知らないので、慎重に
しなければならない。なにしろ370ヘアウの買い物だ。空手形をつかまされたんじゃ、
泣くに泣けない。
オフィスの誰かに確認をとりたいが、英語が話せるのはこの男だけだ。乏しい英語の
能力を振り絞っていくつもの念を押し、交渉を進めるほかはない。
参加者の印であるコスチュームをポルトガル語でアバダーと呼ぶ。この衣装さえ身に
つけていれば、誰でも(買った本人でなくても)ロープの中に入れてもらえる、というのが
トリオ・エレトリコのシステムである。この事務所は、要するにそれの受け渡し場所なの
だが、この時点ではそんなことは知らなかった。
したがって、彼の説明に耳を傾けることから交渉を始めなければならない。
彼はまず、「君はabada、つまりfantasiaを買うんだ」と説明を始めた。
「ファンタジー?」
訳がわからず、怪訝な顔をする僕。
「fantasyじやなくて、fantasiaだ。パスポートのことだ。」
パスポート?
「いや、本当のパスポートじゃなくて、切符だ。いや、切符はない。Tシャツのこと
なんだ。」
・・・?
もし、Tシャツとは別に参加証のようなものが必要だとしたら、この男がTシャツ
だけアホな日本人に売りつけて、参加証を別の人に売りつけようと目論んでいる可柏ォも考えられる。
こんなときは、もう、相手の表情や語調を読みとって判断するしかない。
この話、嘘か、まことか。
僕は直感に従って、この男から買い受けることに決めた。
だがこの男、けっこうこすっからしくて、僕が「買う」と言ったとたん、「500、
いや、400ヘアウ。それ以下では譲らない。他にも欲しがっている人もいる」など
と強弁しはじめた。日本からわざわざ来たということで、足元を見られたのだ。
交渉が行き詰まった。僕は、彼にキャンセルの理由を尋ねた。辻褄の合わない話を
したら、撤退することも考えなけれはなるまい。
「実は、一年前からチンバラーダに申し込んでいて楽しみにしていたんだけど、新しい
恋人・・・」
そばにぴったり貼り付いていた色白の女性の腰を、ここでさらにぐっとひきよせて目
と目を見つめあって、
「・・・つまり彼女と旅行することになってキャンセルしたんだ」
とのろけた。
さすがはブラジレイロ、女に関してはガードが甘い。浮かれついでに小切手の日付
けを見せたのが運の尽きだ。振り込み金額が320と記されているのを忘れたらしい。
「この数字は何だ?あなたは本当に370ヘアウを振り込んだのか?我々は初対面な
んだ。隠しごとがあったんじゃ、交渉なんてできないよ」
とツッコミを入れると、
「実は、一年前に予約すると割り引きしてくれるんだ。僕は320ヘアウで買った。
間違いない。」
とあっさり白状した。
ま、僕も定価で購入できれば御の字だと思っていたことだし、欲張りすぎたらバチ
があたる。
「定価より安くしろとは言わないよ。定価通りでどうだ?」
男はちょっと恥ずかしそうに微笑み、右手を差し出した。
握手。めでたく、交渉成立だ。
「じゃ、引き換えてくる。」
という男について、奥のカウンターまでついて行く。不審な点がないかどうか見届け
るためだ。カウンターには褐色の肌をしたものすごい美女がいて、しかも実に露出度
の高いタンクトップを身につけていたた。ついついそちらに目と心を奪われてしまっ
てから「ガードが甘いのはどっちだ」と反省した。
とにかく、トリックはないようだった。
彼が受け取ったコスチュームを目にしたときは、正直言ってガックリ失望した。
もともとチンバラーダは音楽だけではなくてファッション性も際立っている。きどって
はいないけれど、彼らのファッション感覚は実にカッコいいのだ。
それなのに、今年のコスチュームは道化師みたいでデザインが良くない。おまけに、
注文した大柄の白人男性のサイズなので、非常にデカい。彼も気の毒に思ったのか、
サイズを交換するように美人のムラータに交渉してくれたのだが、
「あなたたちが一番最後だ。ほかのは、全部渡してしまった。代わりはない」
とあっさり却下された。
しかたない、この男の罪ではない。いまさら撤回するわけにもいかない。なにしろ
これはチンバラーダに最大限の接近を試みる切り札なのだ。370ヘアウと引き換え
にこの衣装を受け取って二人に別れを告げる。
「楽しい旅を」
「すてきなカルナヴァルを」
二人とも、心からの笑顔で手を振ってくれた。さっきまで疑心暗鬼の対象だったこと
が嘘みたいだ。
とにかく、よかった。
ハッピーな気持ちに満たされ、歩いて帰ることにする。ついでに、ショッピング・
バーハでお土産物を買いこむ。明日からは、どこの店が開いているのか見当もつかな
いので、しこたま買い込む。もともと買い物は苦手な方だか、気分が高揚しているの
で、買い物が楽しい。日本にいる友人たちの顔を思い浮かべながら、一時間以上かけ
て品物を選んだ。背中のリュックがぱんぱんに膨れ上がった。
もう、昼時だ。そのへんでご飯を食べて、ホテルでひと休みしよう。さすがに疲れた。
大きな目標をクリアして、ちょっと心がゆるんでいた。それが間違いの元だった。
2000年3月1日 amanha
posted by axe junky at
1:17 AM
on Mar 1, 2000
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