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AXE ZANMAI
"ネギーニョと再会"
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朝、サンダルをはいてバーハの海岸を端から端まで歩くことにした。カルナヴァル
が始まったら、そんなふうに海辺で過ごせないかもしれないし。
まずは、灯台の中を見物する。博物館になっていて、ちゃんと入場料もとるが、展
示品に大したものはなかった。古い地図が興味を引くぐらいで.....と思っていたら、
ズン!! と腹に来る絵が一枚、さり気なく飾られていた。奴隷を運ぶ船の中に、丸太を
並べるみたいに詰め込まれた黒人たちの配置図だ。効率的に運ぶために、一人ごとに
頭の方向と足の方向が逆になっていて、それが船艙の隅から隅まで続いている。
街で見かける美しい肌をしたバイアーノ・バイアーナたちの何代か前の親たちが、
こんなふうに運ばれてきたとは....
展望台の景色が良かったこともあって、思いのほか長く滞在してしまった。海岸に
おりると、既に日射しは堪え難いほど熱く、意識を混濁させる。そして、美しき褐色
の美女たち.....
波の音、椰子の樹、降り注ぐ陽射し。
カデイラとソンブレロを借りて、短パン・Tシャツ姿でくつろぐ。
もう最高。トロピカル三昧だ。
子どもたちが水辺を駆ける。褐色の肌に海水が光る。僕も、泳ごう!!
海水は、思っていたよりずっときれいだった。
あまり急に陽に当たると火傷が恐いので、ほとほどに切り上げて、昼寝することに
する。その前にsuco de fabricaに寄って新鮮なジュースを飲みながら店員とダベる。
バイーアが体にしみ込んできた。いい感じだ。
日中のモワーッとした空気の中を歩いて、濃く繁った熱帯の木々を眺めながらホテルに
帰り、冷たいシャワーを浴びてまどろむ。
至福のひとときだ。幸せが、体の隅々をゆったりと浸していく。
目が醒めると、夕刻の心地よい風が吹いていた。
日暮れ前のペロリーニョ。今日は、ネギーニョにお土産を渡すためにやってきたの
だが、はたして会えるかどうか。DIDAの事務所前で待つが、どうも人が出入りする様
子がない。しばらく待ったがあきらめて、ペロ界隈を散歩する。この街は、何度歩い
ても飽きない。
ちょうど建物の反対側にまわったところで、声をかけられた。DIDAのメンバーの
一人が、僕を見つけてくれたのだ。思わず声をあげて近づいていくと、見知った面々
が次々に現れ、僕を歓迎してくれる。彼女たちは、髪をアフロ風に入念に結い上げて
いる最中だった。もちろん、カルナヴァルのためのオシャレなんだろう。よく見ると、
ここの美容室はDIDAが買い取って経営しているようだ。そして、事務所兼音楽スクー
ルの入り口は、こちらにもある。反対側でいくら待っても誰も出てこないわけだ。
美容室には、バイーアを代表する作家・ジョルジ=アマードの等身大(?)の人形が
置かれていた。
DIDAの姉さんたちと会話を試みる。そこそこ通じるのだが、去年までまったく話せ
なかった僕の、一年間のポルトガル語の勉強の成果を誰も誉めてくれない。会話が通
じるのが当然のような感じで受け止められて、ちょっと複雑な気分だ。
彼女たちにもお土産を渡す。人数が多くて、何人いるのかわからなかったので、皆
で分けられるように、星や月を形どった夜光性のシールを持ってきた。本当は太鼓に
貼ってほしかったのだが、その場でその辺に貼られてしまった。まあ、いいか。
彼女たちは、それよりも去年作ってあげた風船の犬やウサギがほしかったようで、
「あれはないのか」と求められてしまった。もちろん、持ってきている。本当は子供
たちにあげるつもりだったけど、一人に一つずつ作ってあげた。ブラジルの大人たち
は、こういうのが好きなようだ。
それを見た美容室の客やら美容師さんやらが「私にも」「うちの子にも」と、つぎ
つぎに要求してくるのには閉口したが、できるだけ応じてあげた。最近、ネギーニョ
が力を入れている子供バンド「SODOMO」のメンバーも、練習の隙を見て、もらいに
来る。そんなときは、なるべく子供を優先させて作ってやる。小型ポンプしか持って
いなかったので、かなり疲れた。が、やはり、良いことはすべきである。
そうやって待っているうちに、ネギーニョが現れた。ちゃんと僕のことを覚えてい
てくれて、握手を求めてくる。(しかし、なぜ彼はいつも僕に手厚くしてくれるのだ
ろう。いまだに謎である)
「ネギーニョ、また来たよ。今日はお土産があるんだ。去年の夏、タンザニアへ入っ
た時に買ったアフリカのタペストリーなんだけど。それから、ママディ・ケイタの
ビデオもある。ギニアのジャンベ・マスターなんだけど、知っているかな?」
さすがは世界的ミュージシャンだ。「ジャンベフォラ」のパッケージを見ると「お
お、これはいい」と喜んでくれた。テレビ番組の録画じゃなくて、市販のものをわざ
わざ買ってきた甲斐があった。
「いま、ちょっと手が話せないんだけど、手が空いたら呼ぶから、事務所においで。
ゆっくり話そう。」
そんなふうに言ってくれたが、僕のポルトガル語で話せることなんて限られている。
ああ、ちゃんと喋れたら、聞きたいことは山ほどあるのに。
でも、せっかくなので「じゃ、しばらくここに居るよ」と答えておく。そして、美
容室に来ているお客さんの子供たちと遊びながら、彼が再び出てくるのを待った。
(帰国後、NHKの特集を見て分ったのだが、この頃彼は資金難のためにカルナヴァル
に参加できるかどうかの瀬戸際に立たされていて、金策に駆け回っていたらしい)
やがて美容室が閉まる時間になり、子供たちは母親につれられた帰った。そのあと
しばらく、一人でネギーニョを待った。さすがに待ちくたびれたが、黙って帰るのは
まずいと思って待ち続けた。約束をしてから二時間ぐらい後で、ネギーニョがようや
く下りてきた。疲れているようだ。彼の多忙を気づかって、
「忙しそうだね。僕も、晩ご飯を食べたいし、そろそろ帰るよ」
と告げて立ち去ろうとしたのだが、
「食事が済んだら、またおいでよ。仕事が片付いたら、ゆっくり話そう。今から出か
けるけど、すぐに帰るから」
と真顔で言う。
カルナヴァル直前だし、そうそう仕事が片付くとは思えないが、そんなふうに言っ
てもらったら立ち去りがたい。とりあえず、前回、毎晩のように食べに行ったジェイ
ズス広場のそばの「眼鏡のおばちゃんの店」へ行く。ここの定食は安くてうまいし、
おばちゃんも味があるのだ。
が、なんと、ここはキロ(カフェテリア方式の食堂/目方単位で支払うので、キロと
呼ばれる)に変わっていた。味は衰えていなかったけど、ちょっとさびしかった。
食事の後で、またしばらくネギーニョを待つ。なかなか出てこない。そのうち、SO
DOMOの女の子たちが太鼓を持って路地に出てきて、整列した。たちまち観光客に囲ま
れる。DIDAの指揮をしていた、アフロっぽい化粧の似合うお姉さんがここでも指揮を
していた。子供たちの技術は、やはりDIDAの正式メンバーには及ばないが、それでも
十分に楽しめる水準だった。
バイーアの多くのバンドはこのようにして公開の場--というか、要するに路上--
で演奏し、観客の視線に晒されてミュージシャンとしての意識を高める。ペロリー
ニョ界隈では、毎晩いくつものバンドがそうやって腕を磨いている。そしてそれは、
そのまま観光資源になるのだ。今では女性バンドの代表格となったDIDAも、そう
やって一歩ずつ成長していったのだ。
子供たちはひとしきり演奏して拍手喝采を浴びた後で、またスクールに引っ込んだ。
指揮のお姉さんに「ネギーニョは中にいるの?」と聞くと「まだ帰ってこない」との
こと。
その後NHKの取材班の人たちも彼を探しに来たが、所在がつかめないので帰って
しまった。彼らの話では「こんなことはここでは日常茶飯事。リップサービスだと
思って諦めて帰った方がいいですよ」とのことだった。
ネギーニョの誘いは「京都のぶぶ漬け」みたいなものだったのかもしれない。
確かにこの街の人は、道を聞いた時など、失望させたくなくて適当な道を教えてく
れたりする。悪気があるのではなくて、目の前の人間が喜ぶ顔が見たくてついつい嘘
を言ってしまう傾向があるようだ。二年前にも、カンヂアルを訪れたのにブラウンに
もチンバラーダにも会えなかった(彼らはツアーに出ていた)僕と相棒を慰めるように、
近所の人たちが「今度の日曜日にボンフィン教会の前で演奏するかもしれない」など
と教えてくれたことがある。
(結局ガセネタだったけれど、おかげで教会の横の芝生に寝っ転がって南国気分を
たっぷり味わうことができた)
今回も、結局ネギーニョには会えなかった。でも、待っている間に「マルコムX」
というバンドやら以前「はるばると世界旅」という番組で紹介されていた、SODOMOと
は別の子供バンドやら、たくさん観ることができた。火曜日ということで、テレーザ・
バチスタ前には大勢のファンがOLODUMを待ち受けていた。路上まで鳴り響く音色に
耳を傾けつつ、ネギーニョが抜けたあとのOLODUMはますますポップ化の傾向を強め
ているな、と感じた。
今回はバーハに宿をとったせいでこれまでみたいにペロに居着くことができなかっ
たけれど、この夜だけはたっぷりとペロ気分を味わった。
明日から三月。いよいよカルナヴァルがやってくる。
2000年2月29日
posted by axe junky at
5:06 AM
on Feb 29, 2000
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